里山の魅力で新しい観光スタイルをつくり出す
「SHE SAW 大原(シー・ソウ・オオハラ)」

女性に向けた新観光ブランドを立ち上げ

 京都市北東部、比叡山の麓に位置する大原。美しい山々に豊かな田畑、日本の原風景ともいえるのどかな山里の景色に溶け込んで、三千院や寂光院など歴史ある寺院が点在しています。そんな大原で立ち上がったのが30~50代の女性をターゲットにした新しい観光ブランド「SHE SAW 大原(シー・ソウ・オオハラ)」です。

 「“SHE SAW 大原”というのは、ターゲットが女性であることから英語で“彼女は見た”を意味する“SHE SAW”に、しば漬け発祥の地である大原の名産品“赤しそ”を掛け合わせたネーミングなんですよ」と教えてくれたのは、本事業で取りまとめ役を担う大原観光保勝会の竹腰幸司さん。事業内容の策定にあたっては、大原が観光の課題として抱えていた「3つの分散化」がキーワードになったといいます。

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3つの分散化の実現を目指して

 そのひとつ目が、「ターゲットの分散化」。「これまで、客層のメインは50~70代でしたが、観光地として生き残るためには若返りが必要。かつ、旅をPRしていくためには、今まであまりアプローチできていなかった女性の発信力や消費欲が欠かせないと考えました。」と竹腰さん。

 次に、「場所の分散化」。従来、大原観光の定番スタイルとなっていたのは、寺を目的地とした大型バスによる団体ツアーでした。それがコロナ禍で軒並み中止に。「withコロナ、今後のafterコロナの時代においては、個人客に分散して旅行をしていただくスタイルへと舵を切らなければ、お客様を呼ぶことは難しい。お寺だけでなく、地域全体を周遊していただくことで、密を避けた長時間滞在が実現できると考えています」そこで、打ち出すことにしたのが「里山歩き」です。里山歩きは、澄んだ空気や心が洗われるような田園風景、緑の香りなど、土地の魅力そのものを五感で体感できるコンテンツ。寺への道を歩いたり、丘に上って棚田を見下ろしたりと、趣向が異なる4つのモデルコースが作成されています。現在、里山歩きマップも準備中。携帯しやすい小型サイズで、デザインも女性に響くテイストのものになっているそう。

 そして3つ目が「季節の分散化」。紅葉のシーズンは何もしなくても大勢の観光客が訪れる一方、それ以外の季節については観光素材の掘り起こしが手薄のままでした。まずは冬の誘客につながる新たな仕掛けを造成すべく、大原の地野菜をふんだんに使用した鍋の炊き出しイベント「大原満喫鍋」を企画。盆地で昼夜の寒暖差が大きい大原で育つ野菜は、甘味がギュッと凝縮されて品質がよく、市内の有名な料理屋がわざわざ買いつけに来るほど。このブランド力のある野菜を冬の大原の魅力として発信するのが大原満喫鍋のねらいです。12月の寂光院「かぼちゃ焚き」、2月の三千院「初午大根焚き」という大きなイベントの狭間となる1月に開催を定め、冬も毎月何かのイベントがあるという状態を整えました。

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野菜とジビエ、里山の味覚を鍋で発信

 大原満喫鍋は1月10日・11日に開催され、主に地元や近郊の方を中心に、両日60名程を集客。里山ならではのジビエ食材、ボタン肉も入った鍋がふるまわれました。「ボタン肉を初めて食べるという方もいらっしゃいましたが、思ったよりクセがなくておいしいという声を聞くことができたりと、大変好評でした」と竹腰さんは顔をほころばせます。大原満喫鍋の開催に合わせ、国際会館~大原のバスの往復チケットと大原の各施設で使える優待券がセットになった「SHE SAW 大原チケット」も1000枚限定で発売。現在大原への主流ルートとなっている京都駅~大原のバスは所要約1時間。座れないことも多く、大原が遠いと感じられてしまう原因になっているといいます。対して、国際会館からであれば約20分と大幅に時短できるため、このルートの強化も以前からの課題でした。鍋当日はSHE SAW 大原チケットを利用して来た方もいて、「ねらい通りの動線が描けました」と自信を見せる竹腰さん。大原満喫鍋は2月27日・28日に第2回を開催予定。「今後も続けていって、大原の冬の風物詩に育てたい」と前を見据えています。

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コロナを大原観光のターニングポイントに

 それでも、コロナの感染が広がる中でのイベントの開催は、常にできるかどうかの不安がつきまとったのも事実。どうしたらできるかを考え、12月に寂光院で行われた「かぼちゃ焚き」は、持ち帰り用容器でかぼちゃを持ち帰るスタイルに変更。密を作らず、スムーズに執り行うことができました。

 「かぼちゃ焚き、大原満喫鍋を実施し、考え方次第で今の状況も突破できると確認できました。コロナをターニングポイントと捉え、SHE SAW 大原ブランドをしっかり確立していきたい。そして、街中とはまったく違う京都の一面をここ大原で多くの方に見ていただきたいと思っています。」

写真提供:大原観光保勝会

大原観光保勝会
〒601-1242 京都府京都市左京区大原来迎院町81−2

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