歴史ある宿場町で“仕事”も“余暇”も楽しむ
「ワーケーションリゾート・備中矢掛」

400年の歴史をもつ
宿場町・矢掛町

 岡山県小田郡矢掛町(やかげちょう)は、倉敷駅から西へ車で約30分の場所にあります。矢掛町といえば、旧山陽道の宿場町が有名で山陽道にある18番目の宿場町として、江戸時代の参勤交代制度とともに栄えました。毎年11月に開催されるイベント「矢掛の宿場まつり 大名行列」では、江戸時代の大名行列が現代に蘇ります。

 この宿場町を舞台に2021年1月8日(金)〜17日(日)の10日間にわたり、実証事業「ワーケーションリゾート・備中矢掛」が実施されました。

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矢掛町の歴史的シンボルのひとつ
「旧矢掛本陣石井家住宅」

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実証事業
「ワーケーションリゾート・備中矢掛」の
パンフレット

日本初のアルベルゴ・ディフーゾタウンでワーケーション

 矢掛町の宿場町では、旧山陽道やその周辺にある空き家を宿に活用し、町全体を活性化させる取り組みを進めていました。その結果、2018年に日本初の「アルベルゴ・ディフーゾタウン」(分散型ホテルエリア)として認定され、近県からも多くのゲストが訪れる“現代の宿場町”として復活。かつての問屋など古い屋敷を改装した宿には、あわせて約100名の宿泊が可能です。

 「去年から“新しい生活様式”が求められ、全国的にリモートワークが増えました。同時に働きながら余暇も楽しむ“ワーケーション”というスタイルが注目されています。分散型ホテルエリアがある矢掛町は、まさにうってつけの場所。ソーシャルディスタンスを保ちながら、仕事や余暇を楽しむことができます」と語るのは、実証事業の担当者である矢掛町観光交流推進機構(以下、やかげDMO)の佐藤武宏さんです。

 今回の実証事業では“おかえりなさいの宿”と呼ばれ親しまれている「矢掛屋INN & SUITES」をはじめ、複数の宿がワーケーションの舞台となりました。なかには、古民家をまるごと一棟貸しする宿もあり、アルベルゴディフーゾ(分散型宿泊ホテル)だからこそ他の宿泊客を気にせず、安心してワーケーションを楽しむことができます。客室で仕事をするもよし、気分転換に場所を変えWi-Fi完備のコワーキングスペースで働くもよし。仕事の合間に家族と一緒に町を散策し、宿場町情緒に悠久の歴史への想いを馳せてみたり、その静けさに思考の原点を顧みてみたり、人それぞれの非日常感が味わえます。

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日本で初めてアルベルゴ・ディフーゾに認定された宿「矢掛屋INN & SUITES」

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木材加工を営んでいた古民家を
改装した観光交流拠点「あかつきの蔵」を
コワーキングスペースに活用

江戸時代の宿場町で
“現代アート”に出会う

 「ワーケーションリゾート・備中矢掛」では、“宿場町で、現代アートに出会う”をテーマに、旧山陽道沿いの古民家を周遊するように作品を展示し、「宿場町アート回廊」を創出しました。デイタイムはボランティアガイドツアーや備中神楽面の絵付けなど地域の文化体験、ナイトタイムには「宿場町ほろ酔いナイトイベント」としてトークセッションを企画しました。

 しかし、奇しくも2回目の緊急事態宣言発令と重なり、安全かつ主題をできる限り温存しながら催行できる方法はないか模索しながら、集客を伴うイベントの催行可否を判断しました。「オンライン開催に急遽変更したトークイベントでは、宿泊客はもちろん、首都圏からも広くご参加いただき、矢掛町を知ってもらう大きなきっかけになりました。また、オンラインイベントの可能性も感じられ貴重な機会となりました」と佐藤さんはメリットも語ってくれました。

 変更や中止に翻弄されながらも、宿場町と現代アートがコラボする「宿場町現代アート回廊」は大成功だったといいます。現存する建物「旧矢掛本陣石井家住宅」を含む4ヵ所に6組の現代アーティストの作品を展示。歴史ある建物がそのままギャラリーとなり、“時”をイメージさせる作品を回遊しながら鑑賞できます。

 「展示に向け、全アーティストが事前に矢掛町を訪れてくれました。町の雰囲気を大変気に入ってくださり、なかには“アーティストの逗留場所に最高ですね”とおっしゃる方もいて、アーティストのみなさんに高く評価いただき、ワーケーションをPRする自信につながりました」と語るのは、やかげDMOとともに連携して企画運営するANA総合研究所の今村美恵さんです。自身も矢掛町に滞在したひとりで、訪問者をあたたかく受け入れてくれる“おもてなしの心”に宿場町の気風を感じたそうです。

 また、現代アート回廊の実施は、ワーケーションや歴史探訪というキーワードで集客できなかった層を呼び寄せる新たな一手にもなりました。「アーティストのファンの方はもちろん、アートに触れる機会の少ない地元や周辺地域の住民も多く訪れてくれました。地元に住んでいても展示スペースとなっている歴史的建物の中に一度も入ったことがない、という人は多いのです。結果、地域の人々が自分の町のよさを知る好機にもなりました」と笑顔の佐藤さん。

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「旧矢掛本陣石井家住宅」に展示された宮永愛子さんの作品『suitcase -key- 2013』。
作品のディスプレイに古い木桶や長持を融合

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同じく「旧矢掛本陣石井家住宅」に展示された中川裕貴さんと米子匡司さんの作品『Dissimilation』

ワーケーション、その先に見据える未来

 新しい生活様式や新しい観光のあり方を考えるとき、ワーケーションには否が応でも期待が高まります。今回の実証事業を通じて、佐藤さんはどんな未来予想図を描いたのでしょうか? 「矢掛町には全国的に有名な観光施設があるわけではありません。しかしながら、宿場町としての歴史と文化、あたたかなおもてなしの心をもつ地域の人々は十分に魅力的なコンテンツであると考えます。今後は、農業体験など地元の人と触れ合う企画も視野に入れ、家族みんなが楽しめるワーケーションリゾートを構築していきたいと思っています。そして、ワーケーション滞在では足らず、矢掛町民になってくれる人が増えればうれしい限りです」

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静かでのどかな宿場町は散策に最適

写真提供:ワーケーションリゾート・備中矢掛 実行委員会

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