白神山地の食文化をストーリーに「SHIRAKAMI PEAKS 山の恵み、ここに極まる」

白神山地の玄関口。自然と共生する西目屋村

 青森県弘前市から車で約30分。津軽地域の西部に位置する西目屋村は、日本で初めて世界自然遺産に登録された白神山地を有し、自然に恵まれた地域にあります。手つかずの広大なブナ林は多様な動植物を育み、貴重な生態系を守ってきました。村には東北地方で有数の大きさを誇る津軽ダムもあり、「世界遺産と水源の里」をキャッチフレーズに掲げています。

 そんな西目屋村で、地域の食文化にスポットをあて、ストーリー化して発信しようという取り組みが行われています。この事業の一環として、1月10日(日)・11日(月)の2日間、白神山地の自然と食文化をテーマにしたイベント「白神ピークス フード&クラフトフェスティバル」が開催されました。

イメージ

大自然と土地の歴史が育んだ、食のストーリーを伝えたい

 「山林の恵みを享受してきた白神圏には、あまり知られていないこの地ならではの食や文化があります。それを掘り下げることで価値を見出し、地域ブランドに育てていきたいというのが根底にある想いです」と話すのは、本事業を主宰する道の駅津軽白神活性化協議会の会長であり、弘前市を拠点にカフェなどを運営する成田専蔵さん。本事業の発端は、成田さんが生み出した「白神焙煎炭焼珈琲」でした。

 白神焙煎炭焼珈琲は、白神山地周辺のリンゴの剪定枝で作った炭を使って焙煎されています。「西目屋村はかつて、“目屋炭”と呼ばれる木炭の生産地として栄えていました。そのことを知り、白神山地の麓のリンゴの木を用いて炭焼き焙煎コーヒーを作ってみようと思い立ったのです」成田さんは炭作りから取り組み、1年以上かけて試作を重ねた末に、白神焙煎炭焼珈琲を完成させました。青森の名産品であるリンゴの木、古くからの炭文化、白神山地の清らかな水。まさに西目屋村の風土が作り上げる、ここでしか味わえないコーヒーです。2019年4月から販売をスタート。それだけでなく、炭製造施設も設けて、すたれていた炭作りの文化も本格的に復活させました。

 背景にあるストーリーを知ることで、1杯のコーヒーに感動や驚きが生まれます。だから、「きちんと語り伝えていきたい」と成田さん。そのきっかけ作りとして開催したイベントには、白神の大地が育む食の数々が並びました。

イメージ

地元にすごいものがある!再発見のきっかけに

 例えば、「白神ピュアシードル」。白神山地のブナでできる「白神酵母」と地元のリンゴを使い、醸造されたシードルだといいます。ほかにも、メイン会場となった「道の駅津軽白神 ビーチにしめや(以下、道の駅)」の屋上で飼っているミツバチが白神山地で集めてきた生はちみつや、地産のそばを使用した白神そばなど、いずれも白神の自然の恵みが詰まった逸品ばかり。さらにイベント名の通り、マタギ文化を伝えるクマの革製品や、モンベルと道の駅とのコラボ商品となる、伝統のこぎん模様でりんごのデザインをあしらったこぎんタンブラーといったクラフト製品の販売も。コーヒーの焙煎体験や飲み比べなども実施し、2日間で約1000人が訪れました。

 「来年以降もやってほしいという声を聞くことができました」と笑顔の成田さん。期待した通り、なぜおいしいのか、それぞれのストーリーを発信することができたと手ごたえを感じています。今回は参加者のほとんどが近隣地区からの来訪でしたが、そのことにも意義を感じているそう。「地元にもこんなにいいものがあるんだよ、ということに多くの方が気づいていないように思います。イベントをきっかけに再発見していただくことができたのではないでしょうか」まずは地元の人に興味を持ってもらい、インフルエンサーになってもらう。そしてゆくゆくは、「インバウンドのお客様にも発信していきたいと思っています」と意気込みを語ってくれました。

イメージ

イメージ

自然景観+食で誘客を目指す

 現在、白神山地とその周辺エリアで暮らしてきた人々の食生活、食文化を伝えるためのストーリーを制作中。合わせて、ストーリー性を活かした新たな体験コンテンツを作っているところだといいます。「やりたいことがいっぱいありすぎて」と成田さんは笑います。「自分で焙煎した豆で一晩かけて水出しコーヒーを作り、翌朝山の中で飲む」「津軽ダムの下にあった集落で作られていた、目屋豆腐の手作り体験」などなど、アイディアは尽きません。また、村に滞留してもらうきっかけとして、今後フェスティバルをキャンプができる時季に開催することも考えていると話します。

 「西目屋村に来ていただく動機として、自然景観にプラスして“食”という切り口を浸透させたい。そして、日の出とともに起き、自然の音を聞きながら過ごす、今の時代だからこそぜいたくな村の暮らしまで、徐々に伝えることを増やしていければと思います」

写真提供:道の駅津軽白神活性化協議会

コラム一覧へ