眠っている観光資源を地域全域に発信する「60分ウォーキングもてぎ10選」休眠資源活性化プロジェクト

年間300万人以上が訪れる茂木町観光の実情

 栃木県南東部に位置する茂木町は、モビリティテーマパーク「ツインリンクもてぎ」や、やな漁で有名な「大瀬観光やな」で知られる自然豊かな中山間地域です。年間約306万人が訪れる観光の町ですが、ツインリンクもてぎ、大瀬観光やな、道の駅もてぎに観光客が集中しているのが実情で、「これらのキラーコンテンツに頼りっきりではなく、知名度は低くとも魅力的な観光資源をコンテンツ化して、誘客に繋げていきたいです」と茂木町商工観光課の田中のり子さんは語ります。

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那珂川で鮎の梁漁(やなりょう)を体験できる
「大瀬観光やな」

眠っていたふたつの観光資源がきっかけに

 新たな観光資源を探しているなかで、幻の未成線「長倉線」に目を向けました。長倉線とは戦前に計画がありながらも戦争の混乱により、列車が走ることのなかった鉄道愛好家涎垂の鉄道路線です。茂木町にしかないこのコンテンツは観光に活かせるのでは?さらに、四季折々の花が咲く公園「花の山」にも注目。2年前に閉鎖された民間の花木園で、しばらく放置され、荒れた状態でしたが、世界で活躍する押し花アーティスト・杉野宣雄氏プロデュースのもと茂木町が再整備して、生まれ変わりました。

 このふたつをどう活用すればいいのか話し合いを続けるなか、たどり着いた答えは、“茂木町の心癒される里山風景”。観光しながらのどかな風景も楽しんでもらうには歩いて回るのがベスト。歩くことで免疫力が高まり、健康維持にも繋がる“ウォーキング”をコンセプトに、里山風景を活かしたウォーキングルートを10コース造成。折しも新型コロナウイルス感染拡大による、3密回避に適した内容となりました。ニューノーマル時代に合わせた観光スタイルです。

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10コースのひとつ、「森の妖精に会えるミツマタの森散策」。
東日本唯一のミツマタ群生地の散策を楽しめる

観光資源の価値に気づくと地域全体が元気に

 「例えば、ツインリンクもてぎで遊んだあと、どこに行こう?そんな時に、ちょっと歩いて茂木を満喫できる場所を選びました」と田中さんは語ります。春は花の山・ミツマタの森・桜道でSLと並んで歩く、夏は那珂川で納涼・石畑の棚田など、季節と里山の風景を感じられる、茂木の魅力が詰まったコースの数々です。

 昨年12月に2回、幻の未成線「長倉線」のモニターツアーを実施。ガイドの説明を聞きながら長倉線の遺構を歩いて、幻の鉄道に想いを馳せるというテーマです。それぞれ定員20名のところ、予想を上回る50名以上の応募がありました。「当時のまま残るトンネルや境界杭を見ることができて感動しました」「楽しさのあまり、地元新聞の読者登壇に投稿しました」など、参加者からうれしい声を聞くことができ、誘客の可能性を感じました。 実証調査が始まる前は「長倉線を歩くなんて、誰も参加しないのでは?」と周囲から否定的な意見もあり、心が折れそうになったことも。いざモニターツアーが行われ、参加者が歩いている姿を見かけ、長倉線について自ら語ってくれる町民の姿も。眠っていた観光資源に価値があったと、好意的な目を向けてくれるようになり、地域全体が明るくなったように思えました。

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全長約6kmを歩く長岡線。
築堤やコンクリート橋、
トンネルなど鉄道遺構を見られる

いまあるものを磨き上げ、今後の観光誘客に活かす

 幻の未成線「長倉線」のほかに、茂木町ならではの観光コンテンツとして期待できるのは「食べるジュエリーに誘われて 美土里農園周辺散策」。深沢地区にある美土里農園で「とちおとめ」と「とちあいか」のイチゴ摘み体験ができます。「とちあいか」は酸味が少なめで甘さ際立つ新種のイチゴです。ヘタの部分くぼんでいるため、縦に切ると断面がハートに見えるのが特徴。「生産量が少なく、デリケートなため県外には出荷していません。ぜひ茂木町まで足を運んで味わってほしいです」と切望する田中さん。イチゴ摘みの後は、江戸三大仇討ちのひとつ、“浄瑠璃坂の仇討ち”ゆかりの法幢寺を散策します。フルーツと仇討ち、このギャップも楽しんでもらえたらうれしい限りです。

 お金をかけて観光にまつわる新たなものを作るのは、時代にそぐわない。観光資源を掘り起こし、磨き上げて、何度でも訪れたくなる町づくりを進めたいです。100人が1回より、10人が10回来ていただけたら。「まずは、近郊から訪れる既存の観光客に目を向け、10コースを組み込んだ旅行商品を作りたいです。ゆくゆくはDMO(観光地域づくり法人)を設立して、地域経済の活性化を図れればいいですね」

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「桜道でSLと並び歩く 茂木まちなか散歩」のコース。
迫力あるSLと桜の共演が見事

写真提供:茂木町商工観光課

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