アートで生み出す、21世紀型の地域創生「ANA meets ART “COM”」

アートと地域をつなぐプロジェクト

 「アートやカルチャーの支援をしながら、旅行やその先のインスピレーションにつなげたいと思ったんです」ANAホールディングス株式会社デジタル・デザイン・ラボの田辺佳奈美さんは、従来の観光資源ではなくアートとワーケーションをテーマに地域創生を行うプロジェクト「ANA meets ART “COM”」を企画した理由を教えてくれました。

 コンテンツは「アーティストインレジデンス」「マイクロビエンナーレ」「アートワーケーション」の3つ。アーティストが一定期間地域に滞在し、現地の文化に触れ合いながら作り上げたアート作品の展示会を実施、新たな魅力やコミュニティを築く、そして、誘客につなげるという地域創生モデルの構築を目指します。

 対象地域になったのは、鳥取県鳥取市、長野県塩尻市と広島県三原市。東京以外の選択肢を見てどんどん吸収して視野を広げてほしいと、絵画、イラスト、写真、映像、音楽など、さまざまなジャンルから若手アーティストを中心に20名が選ばれ、3つの地域に分かれて滞在をしました。

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人との交流がよい刺激に

 アーティストは平均2週間ほどそれぞれの地域に滞在し作品を制作。田辺さんのもとには多くのアーティストから「想像していなかったところに心を動かされた」という感想が寄せられました。なかでも、地域の人との交流は一番大きなものだったよう。「地域の魅力ももちろんですが、彼らは滞在してみて東京とは違う距離感での人との付き合い方にびっくりしたそうです。突然、しかもコロナ禍に来たにもかかわらず、地元の皆さんがすごく親切にしてくださったと言っていました」

 3つの地域を回っていた田辺さんは、一歩引いて様子を見ていました。すると、アーティストも地元の人もお互いに関わることで変化していくのが見て取れたと言います。「東京では比較的スタイリッシュなイメージがあったアーティストが泥だらけになって野沢菜を取っていたり、コロナ前は世界中を飛び回って活動を行っていたような人が、すっかり地元の人より地元の人のようになってしまったり。地域の方は、地元を『なんでもないところ』と思っていたそうなんです。ムービーを作るにあたって、各地域で関わった方にインタビューをさせていただいたのですが、自分たちの地元に対してあまり自信を持てていなかったところにアーティストが来て、外からの目線で素晴らしいと言ってくれたことがすごく刺激になったようです。『改めて自分が住んでいるところを考えるきっかけになりました』と言う方もいらっしゃいました」

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コロナ禍で迫られた臨機応変さ

 2月14日までは各地域でアーティストが制作した作品を展示する「マイクロビエンナーレ」が開催中。街の中心的施設で人の流動がある会場もありますが、新型コロナ感染症の拡大で街にほとんど人が歩いていないというところも。そこで、一部の作品の写真やムービーをホームページ上で公開し、自由に移動がかなわない今、全国の人に鑑賞してもらえる場を作ることにしました。

 また、アーティストがインスピレーションを受けた場所への訪問や地域の人々との触れ合いを予定していた「アートワーケーションツアー」は、緊急事態宣言を受けてオンラインへ移行。「ありがたいことに募集定員はすぐに埋まりました。リアルでの実施行程もすべて組み終わった後だったのですが、やはりリスクがあるので……」と、とても残念そうな田辺さん。3地域合同で、一部のアーティストのトークや対話型のアート鑑賞などをオンラインで開催することになったそうです。

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来年度の実施を目指して

 コロナ禍での実施は大変でしたが、3地域同時に行ったことはよかった点だと田辺さんは言います。「3サイクル回したのと同じようなことができたかなと思っています。その辺りをブラッシュアップして、できるようであれば来年度もほかの地域で展開したいですね。ビジネスモデルをきちんと組んで、お金が回る仕組みを作りながらやりたいと思っています」

 実施するなかで「発信」に関する課題も見つかりました。実際にアーティストと関わった人には刺激になりましたが、それ以外の人へはなかなか伝わっていないのが現状です。「インスタグラムで1ヵ月間現地の様子を中継していましたが、ほかの方法でいい見せ方ができませんでした。今の日本のシステムだとそういうことを発信しているプラットホームがないので、あれば日本の中でもアートや文化の見方が変わってくるのかなと思います」そして、最後に「ぜひ、ホームページ上で作品を見てください」と締め括ってくれました。

>>ホームページ

写真提供:ANAホールディングス株式会社

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