地域と一緒に持続可能な観光を目指す~「新しい旅・生活様式」を取り入れた地域周遊滞在型ガイドプログラム~

自治体の垣根を越えて誘客に取り組んだ10年間

 八ヶ岳南麓と西麓に位置する山梨県北杜市・長野県富士見町・長野県原村は、2010年に観光圏整備法に基づく“八ヶ岳観光圏”として国土交通省から認定された観光エリアです。自治体の垣根を越えた協力体制のもと、長期滞在型の観光施策に取り組んできました。

 このエリアは、30分ほどの移動で標高差約1000mもの自然変化を楽しむことができる非常に稀有な場所。「私たちは“1000mの天空リゾート八ヶ岳?澄みきった自分に還る場所?”をブランドコンセプトに、地域のみんなで一丸となり観光施策を考え、トライすることを続けてきました。そして、この10年間の蓄積が“withコロナ時代に対応した地域周遊滞在型ガイドプログラムの造成”として結実しました」と語るのは、八ヶ岳ツーリズムマネジメントの小林昭治理事長です。

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4種のガイドプログラムのひとつ「EV-トゥクトゥク・ライドツアー」

withコロナ時代に強い観光プログラムとは?

 beforeコロナ時代に旅に求められていたものは、非日常とコスパのよさ。それがwithコロナ時代になり、安心・安全が旅の第一条件になったと小林さんは分析します。そこで今回は、徹底的に“withコロナ時代に強い”観光プログラム造成と磨き上げに注力しているとのこと。「去年から3密を避けて近場を旅する“マイクロツーリズム”が旅のトレンドになりました。私たちはターゲットを“250km以内を自動車で移動する人々”と具体的に設定。地元や近県に住んでいても知らない八ヶ岳の自然や文化について、地元ガイドが案内する地域周遊プログラムを造成しました」と語る小林さん。

 withコロナ時代に“地元ガイドが案内するツアー”と聞けば逆行するようにも思えますが、ガイドや運営スタッフが活用する高いレベルのガイドライン作りはもちろん、専門家を招いての感染症対策やガイド育成ワークショップも頻繁に実施。多くの観光施策が非接触へと向かう今、地元ガイド付きツアーにこだわった理由とは?

 「10年間さまざまなアンケート調査を行ってきました。そこからわかることは、常にトップボックスを極める必要があるということ。“非常によい”と感じてくれた方が、知人友人などに八ヶ岳のすばらしさを拡散してくれるのです。では、その満足度はどこからくるのか?といえば、地元の人との触れ合いによる新しい発見や体験なんですね」

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地元ガイドが案内するプライベートツアー「三十三番土偶札所巡り」

周遊型ガイドプログラム造成の舞台裏

 八ヶ岳観光圏では、アウトドアツアーを得意とする4事業者とともにwithコロナ時代に強い下記の観光プログラムを造成しました。次年度以降の本格的な販売に向けて、日々モニタリングを重ねている担当者さんにお話を伺いました。

【①EV-トゥクトゥク・ライドツアー担当:青井冬樹さん】
 メンバーのひとりが、三輪バイク「トゥクトゥク」で清里の自然の中を走ったら楽しそう!環境に配慮した電動のトゥクトゥクで周遊しましょう!と提案してくれたのがきっかけです。昼間のツアーでは、高原の牧場や山岳景観を眺めながら走る爽快感は格別ですし、夜間のツアーでは、日本三大星空にも選ばれる長野県の美しい星空を満喫。何よりトゥクトゥクは日本人にとって新しい乗り物なので、誰もが乗った瞬間から笑顔になります。

 地元ガイドがガイドブックには載っていないスポットへ案内する点も好評です。立ち寄り先では交流が生まれ、確実にリピーターを増やしています。参加者の生の声や御礼の手紙がガイドたちの励みになり、日々ガイドたちがレベルアップしていくのを見て、これはほかの事業にも活かせると手応えを感じています。

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【②サイクリング(ポタリング)ツアー担当:小林 勉さん】
 高原リゾート、清里の豊かな自然をのんびり味わいたいというニーズが潜在的にありました。そこで散歩をするようにゆっくり楽しむサイクリング「ポタリングツアー」を提案。アップダウンのあるルートでも電動アシスト付きのEバイクなので「坂道を上っている気がしない」という声が聞かれるほどラクチン。コロナ禍で集客への不安はあったものの、同時に電車やバス通勤から自転車通勤にスイッチする人も多いと聞き、これはEバイクツアーPRの好機であると感じています。

 参加者の方から、「車では通れない場所にある景色を味わえた」「ガイドさんの説明を受けながら見る景色に深く感動できた」など多くの絶賛の声をいただきました。誰もが行動制限を経験するなか、“旅=生きていることを再確認する行為”と捉え、私たち運営側も真摯に取り組まねばならないと思っています。

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【③フットパスツアー担当:鳥屋尾 健さん】
 フットパスとは、森林や田園、町並みなど昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩く、イギリス発祥のアクティビティです。まさに足元の魅力を見つめ直す究極のマイクロツーリズムであり、コロナ禍だからこそより意義深いと感じています。当初は地域の人々に受け入れてもらえるか不安でしたが、フットパス界のレジェンドと地域の魅力を知る観光のプロと一緒にプログラムを造成できたことで、充実したコースが完成しました。

 いろんな人と歩けば歩くほど、さまざまな視点での発見が加わり、化学反応を起こしています。フットパスツアーとは、進化し続けるプログラムなのだと改めて実感。今回学んだことは観光分野にとどまらず、持続可能な地域をどう作っていくか?を考えるときに役立つエッセンスがぎゅっと詰まっています。ここ八ヶ岳から日本中に「いつもを歩く、いつもではない旅」を広めたいと思っています。

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【④三十三番土偶札所巡り担当:須藤治憲さん】
 日本遺産コンテンツ「三十三番土偶札所巡り」をはじめとする八ヶ岳地域ならではの魅力を活かしたマイクロツアーを造成。「コロナ対策・安心・安全」をテーマに自家用車でまわるプログラムとし、縄文コンシェルジュが感染対策の目配りとともに参加者の縄文の興味や知識にあわせてガイドします。史跡公園での縄文コスプレ、火おこし、石斧などの体験や地元フレンチの名店が開発した縄文フレンチなど、個人の旅では得られない特別な1日を提供できると感じています。

 1万年以上続いたという縄文時代。縄文コンシェルジュや地域学芸員との対話、縄文体験により、数千年を遡り自然環境と共存した縄文人の生活に出会うことは、人類社会にとって普遍的なものにも出会えると思います。縄文時代に非常に栄えたといわれる八ヶ岳地域で、美しい山岳風景とともに心に残る特別な旅をぜひお楽しみください。

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持続可能な観光プログラムがもたらす未来

 地元ガイドを起用したことで、現状のモニターツアーはどれも高い満足度を得られている様子。長年観光業界に携わってきた理事長の小林さんに、八ヶ岳観光の未来について伺いました。「八ヶ岳地域は、水と山の資源に非常に恵まれています。この資源をどう見せるか?どういうルートで見せるか?しっかりと可視化せねばと思っています。そして、常に観光施策の中心に“市民”と“郷土愛”を据え、一過性で終わることのない持続可能な観光プログラムを造成する。その結果、関係人口が増え、交流が増え、地域の人の楽しみも増え、人口流出も防ぐ。観光を通して地域づくりに大きく貢献していきたいと思っています」

写真提供:一般社団法人 八ヶ岳ツーリズムマネジメント

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